TRPG[モノトーンミュージアム]は有限会社「ファーイースト・アミューズメント・リサーチ」及び「すがのたすく」の著作物です。

■演目データ
 プレイヤー:1~3人
 演者レベル:3
 プレイ時間:約3~9時間(※オンラインボスセッションにおける想定時間)
       
約9~12時間(※オンラインテキストセッションにおける想定時間

※本演目は、ゲームマスター(以降GM)が『モノトーン・ミュージアムRPG(以降MM)』を所持している必要がある。

■本演目について
 ソロプレイ、初心者向けに作った演目です。PC2~3人まで遊べるってだけで人数が増えたからといってシナリオ上のギミックとか面白みが増える訳ではありません。
初心者向けの為戦闘難易度はかなり優しめで、描写やNPC達が世界観の説明を多くしてくれます。多いので、鬱陶しく感じる可能性はありますが、大目に見て下さい。

TRPGシナリオ企画:『待ち合わせは丑三つ時に』参加演目となります。
 お話しの内容は、豊穣の国と言う平穏な国で、国の周囲に住むアヤカシと人間達が争おうとするところを、紡ぎ手であるPC①と紅が特徴的なアヤカシがタッグを組み、歪んだ物語を正そうとするお話しです。

※GMの方はちょっと大変かも……。世界観とかはともかくNPCの一人を“PCとして戦闘に参加させる”為、戦闘中にエネミーと同時に、NPCも動かす必要があるので。なるべくデータわかりやすく組んでますが、戦闘にてんやわんやする可能性があるので、システムに慣れないうちは厳しい可能性があります。
●最初に
 本シナリオを遊ぶGM(ゲームマスター)は、本文及びデータの内容を、複製したものに限り、改竄、削除及び加筆を行ってもよいものとします。
また本シナリオを遊んだことにより生じたあらゆる問題について、当方では一切の責任を負いかねます。予めご了承いただける方のみ、ご利用ください。
【要約:遊ぶ時に、話の流れやPCの設定で、シナリオの内容やデータ(エネミーデータ含む)が変わっても問題ありません。他のシナリオをプレイする時、このシナリオの設定を持ち込むのであれば必ずGMに相談しましょう。】

◆ 今回予告 ◆

 神の“御標”により幸福が約束された物語。
従っていれば“ハッピーエンド”。めでたしめでたし。

 だけれどそれを歪める者がいる。
幸せな“御標”も歪められれば、ほらこの通り。
従っていれば“バッドエンド”。めでたしめでたし……。

 平穏が約束された国で、君が妖と出逢う時、物語は動きだす。

 本来の“ハッピーエンド”を望むのであれば、君が、物語を紡ぐのだ。
歪められた物語を正す力が、君にはあるのだから。さぁ、物語の幕があがる。

モノトーンミュージアム
「紅き妖と物語を紡ぐモノ」
          ーーーかくして、物語は紡がれる。

◆ ハンドアウト ◆

 各PCには以下の設定がつく。GMはセッション開始時にPLとよく相談すること。PLが3人以下になる場合は、PC番号の若い順に使用すること。
PC①:豊穣の国に住む住人
PC②:“名もなき旅人”を探し豊穣の国に流れ着いた旅人
PC③:豊穣の国の周囲に住む其達


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演目「紅き妖と物語を紡ぐモノ」【PC①用ハンドアウト】
■演目パートナー:ラール 推奨感情:友情
■PC間パートナー:PC②
■推奨クラス:なし ■クイックスタート:小さな英雄

 君は豊穣の国のサラおばさんの宿に住み込みで働いている住人だ。
君は13年前の“黒点の日”に、伽藍に殺されかけたことがある。その窮地を救ったのは“名もなき旅人”だ。
 今でもあの日の光景をよく夢に見る。やけに鮮明だけど、毎回同じ夢。
しかし、今回は少し違っていた。夢の終わりに“声”が聞こえたのだ。

『紅き妖と共に歩め。さすれば争いは止められる。めでたしめでたし。』

君は直感的に理解した。これは御標だと。君だけに下ったこの御標には一体どんな意味があるのだろうか……。疑問を抱きつつも、君は店の手伝いに奔走するのだった。


※13年前は紡ぎ手にまだ覚醒していないことを想定している。また種別は“人間”であることを想定している。

※1人で遊ぶ場合
PC間パートナーは
ミドルフェイズに入るまでに、パートナーにしていないNPCのうち1人から指定すること。
NPCのラールはお助けキャラとして戦闘や情報収集に参加する(更に詳しい情報が欲しい場合はGMに確認すること)。特に指定はないが、推奨逸脱能力は、憤怒の一撃と、偽りの不死を持っておくと間違いないだろう。

※3人で遊ぶ場合
3人で遊ぶ場合は“ラールは登場しない”ので、演目パートナーをPC③に変更する。

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演目「紅き妖と物語を紡ぐモノ」【PC②用ハンドアウト】
■演目パートナー:名もなき旅人 推奨感情:憧れ
■PC間パートナー:PC①
■推奨クラス:旅人 ■クイックスタート:名もなき旅人

 君はかつて“名もなき旅人”に助けられた。
一方的に助けられ、すぐに去ってしまったので名前も聞けていない。
一言お礼を言おうと彼を探していた矢先、彼が豊穣の国にいると情報を掴んだ。

 だが、どこを探しても彼らしき人物は見当たらない。
それでも諦めずに国の外れまで探しに来ると、一匹の其達と人間の話し声が聞こえて来た。紅が印象的な其達を見て、君はある噂を思い出す。かつて、“名もなき旅人は紅き妖と共にとある国を救ったもしかしたら、あの其達なら旅人がどこにいるのかを知っているかもしれない……!
  
※少し慣れた方向け。HO以外の描写や、サポートが極端に少ない為、自分から積極的にPCやNPCへ絡んでいくことを推奨する。
※3人で遊ぶ場合
PC間パートナーをPC③にする。

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演目「紅き妖と物語を紡ぐモノ」【PC③用ハンドアウト】
■パートナー:“名もなき旅人” 推奨感情:不安
■PC間パートナー:PC①
■指定クラス:其達 ■クイックスタート:奇妙な隣人

 君は豊穣の国の周りに住むアヤカシだ。
13年前の黒点の日に、“名もなき旅人”と共に国外れに現れた伽藍を倒した。
旅人は、人間を守って欲しいと一言伝えると、名前も名乗らずに去っていった。
 恩人の頼みを無下に出来ないと、他のアヤカシが人を害する度に、人間達を守って来た。
しかし、最近他のアヤカシ達の様子が明らかにおかしい。以前は傷つけるといっても驚かせた際に尻餅をつかせる程度だった。だが最近は明確に敵意を持ち人間に牙を向けている。
ある日、森の奥深くに一人の人間がのこのこ歩いてきた。その人間を見た黒いアヤカシは、鋭い鉤爪を人間に向け、一直線に向かっている。君は人間を助ける為に走りだすのだった。

※紅色を目に見える形で身に付けて下さい。体毛の一部が紅色でもいいですし、武器などが紅でも構いません。
※NPCのラールの代わりのポジションですが、ラールの設定等は無視して構いませんし、一切参考にしなくて大丈夫です。
※一人で遊ぶ際のサポート&進行役のラールの代わりとなるので、いきなり知らない情報を思い出したり、シナリオからの無茶振りがあります。
※PC①とは積極的に仲良くしてくれると、進行上ありがたいです。


◆ 舞台設定 ◆

【豊穣の国】
統治形態:王政 
人口:2900人 
面積:73.25k㎡
所在地:緑葉山脈
気候:温暖湿潤

 季節の変わり目の“始まりの日”に御標が紡がれ、それに従うことにより、不作もなく平穏が約束された国。御標の内容は毎回異なるが、共通する点は、作物を“捧げる”ことだ。国民は王族を含め欲がなく、平穏に慎ましやかに暮らすことこそが一番だと考えている。
 この国には昔からアヤカシ(其達)がよく出ると噂される。実際に見たというのが子供か、酔っ払った大人しかいない為、殆どの人は迷信だと思っている。この国の者は、悪いことをするとアヤカシに食べられると教わり育つ為、実態はなくとも身近な存在に感じている。
 13年前の“黒点の日”に国が滅びそうになる所を紡ぎ手である“名もなき旅人”によって救われる。
 他国とは昔から作物を交易に利用し良好な関係を築いており、争いは殆どないが、最近は何かと物騒な噂が流れている。
 紡ぎ手に対しては国全体が認めている訳ではないが、黒点の日に助けられたこともあって、国の殆どの人は好意的で、基本的には黙認する。

■NPC


名もなき旅人
 旅人/戦人
「こんな結末は誰も望んじゃいないんだ。」
 かつて豊穣の国を伽藍から救った旅人。17歳。男。
 “黒点の日”に颯爽と現れて、伽藍を倒し、国を救った紡ぎ手。
その後すぐに国を去ってしまったので、名前を知る者はいない。

サラ・ハザック
 戦人/旅人
「つべこべ言わずにさっさと食べな!あたいが作った料理が冷めちまうだろうが!!」
 PC①が住む宿の女亭主。57歳。女。
 彼女の作る料理は絶品で、この国一番と謳う者も多い。
分け隔てなく接する気さくな人柄と、彼女の料理から宿屋はいつも大盛況だ。
店では、彼女が法律で、身分など関係なく平等に扱われる。元は各国を渡りあるいた凄腕の戦人で、多少の騒ぎは気にも留めないが、彼女の逆鱗に触れて無事だった者はいない。
 得意料理は国で採れた野菜をよく煮込んだスープ。好き嫌いはない。

シルム・ハザック
 戦人
「全く、しょうがないなぁ。一つ貸しだからね!」
 サラの娘。15歳。女。
 サラの娘とは思えないほど、容姿端麗でとても可愛い。
しかし、やはりサラの娘だけあって手を出して痛い目を見た男性客は数しれず‥‥‥。
裏表がなく、面倒見も良い。誰とでも気さくに話し、すぐに打ち解けられる看板娘。
 ただ、料理はまだ不得手で、よく味見役であるPC①を昏倒させている。好き嫌いはない。母のスープが大好物。

アリウム
 僧侶
「人は時にどうしようもなく無力。せめて何か変わればと、神に祈りを捧げるのです。」
 豊穣の国の神父。34歳。男。
 その若さにも拘わらず、一国の教会を任せられるほど、聖教会から信頼された誠実で敬虔な信徒。かなりの人格者で温厚な性格。歳よりも若く見られることが多い。物腰は柔らかく、国民から慕われている。
 本人は気にしていないが、国民が事あるごとに彼を頼ってくる為、教会に仕える他の信徒は過労で倒れるんじゃないかと、悩みが絶えない。嫌いな物はないが、甘い物が好き。国外れに成る豊穣の実が大好物。

ラール
 其達
「馴れ合いは好きじゃねぇし、人間は嫌いだ。ただ、借りがあるから助けてやってるだけだ。」
 豊穣の国の周囲に住む喋るアヤカシ。約23(人間換算で約14)歳。オス。
 紅い毛を持ち、知能が高く人間と話すことが出来る。
“黒点の日に“名もなき旅人”の協力を得て、国外れに現れた伽藍を倒した。旅人は人間を守るよう伝え、名も名乗らずに去っていった。それからは事あるごとに人間を助けている。
 人間に悪さをするアヤカシとよく対立している為、周りのアヤカシから煙たがられている。プライドが高く、行動派だが、しっかり反省して次に生かせるタイプ。
 葉野菜が苦手だが、出されれば何でも食べる。塩味がよく効いた肉が大好物。
※ソロプレイの場合はPCの一人として扱う。
※3PLの場合は登場しません。

◆ 演目背景 ◆

 アリウムには隠し子の娘がいた。しかし、彼女は“黒点の日”に伽藍になり、“ラール”と“名もなき旅人”の共闘により、最後は“ラール”が止めを刺すことで幕を閉じた。

 だが、アリウムは後にアヤカシが娘を殺したとだけ聞かされる。娘に止めを刺した“アヤカシ”、娘を救わず、他人を救った“紡ぎ手”、娘は亡くなったのに幸福に暮らす人々を恨むようになる。
 その想いは年々積み重なり、心が虚無に蝕まれ伽藍に堕ちた。“屈服の言葉”と歪んだ御標を使いアヤカシたちを操り、人々を襲わせた。あの時の紡ぎ手に汚名を着せる為に、“逢魔ヶ刻”を使わせ、“名もなき旅人”の姿を装い人を襲わせた。

 そして、季節の変わり目に下る御標を歪め、人間とアヤカシを争わせ、双方に自分と娘と同じ苦しみを味合わせようとしたのである。

※GMは事前にラールのステータスを公開してもいいだろう。

オープニングフェイズ

■シーン0 君の物語 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 これはPC①の夢だ。夢の為好きに動けず、声を出そうとも上手く声に出来ないが、心情ややりたいと思った行動をRPなどは自由に行える。また、PC①はOPシーンがもう一つある。この二点を伝えたうえで進行すること。
伽藍が紡ぐ御標は正確には決めていないので、PLが気になった場合はそのPCに合わせて御標を演出するか、無数の御標が降りかかり身動きが取れない、もしくは『国民全員が殺し合い幸せになりました。めでたしめでたし。』とするといいだろう。


▼描写1
 これは君が今みている夢。かつて実際に体験した記憶。
“黒点の日”。13年前、各地に一斉に“夕凪の彼女”と呼ばれる伽藍が現れ、歪んだ御標を紡いだ。瞬く間に人々は異形となり、その異形がまた異形を、更には伽藍までをも生みだす地獄が、左の地全土に広がった。君が住む豊穣の国も例外ではない。

 君の眼前には地獄があった。
色ある者は無彩色に。幸福な喜劇は悲惨な悲劇へと変わっていく。響き渡るは阿鼻叫喚の大合唱。その真ん中で、魂までも虚無に堕ちた化け物、“伽藍”は楽しそうに御標を紡ぐ。
 幸せが約束された御標ではなく、歪んだ不幸が約束された御標を。
君にも勿論、その歪んだ御標は降り注ぐ。到底不可能な内容だとしても御標は御標だ。君の身体はミシッ、ピキッと、音を立て、まるで身体がひび割れていくように虚無が全身を蝕み始めた。


▼描写2
 このまま身体が虚無に蝕まれ、異形になると思った時、よく通る、澄んだ声が聞こえて来た。

□セリフ:名もなき旅人
「こんな結末は誰も望んじゃいないんだ。」
「君の物語の結末はこれでいいのかい。こんな面白くもない悲劇のシナリオで満足なのかい?」
「自分の物語は自分で紡ぐものだ。足掻くことをやめてしまったら、そこで物語はお終いだよ。」

 そう言うと彼は、剣を手に伽藍へ立ち向かった。
そして、激闘の末に伽藍を打ち倒したのだ。歪んだ物語は正され、本来の幸福な物語が始まる。
 全員とまではいかないが、人々の異形化は解け、本来の御標も紡がれた。しかし、救世主である彼は、まるで幻だったかのようにその姿を消してしまった。

◆結末
 何度も夢に見るあの日の光景。お礼の一つも言えぬまま、いつもここで夢は終わる。しかし、今日の夢は違っていた。どこからか声が聞こえる。男か女か、大人か子供かさえわからない。だが、どこか心地いい声が……。

『紅きと共に歩め。さすれば争いは止められる。めでたしめでたし。』
君は本能的に理解した。これは御標だと。
 シーンを終了する。

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■シーン1 豊穣から生る幸福 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC①の幸福な日常を描くシーン。シルムとサラを使い、PC①に幸せな日常、この人達を守りたいと思わせる様に進行すると良いだろう。
 一見何気ない日常だが、歪んだ御標に対して立ち向かう為、この国の人々、そして幸せな日常を守る動機を与える大切なシーンだ。
 描写2に関して、唐突に世界観の説明が入ることに違和感を感じるかもしれないが、モノトーンミュージアムを初めて遊ぶ人向けに描いたチュートリアル向け演目なので許して欲しい。PCがアリウム神父に挨拶に行かない場合は、買い物の途中で偶然出会ったことにするといいだろう。


▼描写1
 目覚めると、見慣れた天井が目に入る。それと同時に聞き慣れた声が飛んでくる。

□セリフ:シルム・ハザック
「PC①大丈夫?うなされてたみたいだけど、もしかして、アヤカシにいたずらされた……?なんてね♪」
「ほら、早く起きて支度して!御標のお祝いで、支度が大変なの知ってるでしょ。お母さんなんて、PC①が起きてこないから、もうカンカンだったよ。」
「私は手伝いがあるから行くね。PC①も早くいかないと……命はないかも。」

□セリフ:サラ・ハザック
「ったくあんたは!いつまで寝てるんだい!!アヤカシに化かされた訳でもないだろうに。」
「今日は特に忙しいんだから、寝坊した分、馬車馬のように働いてもらうよ。」
「さ、さっそくお使いに行ってもらおうかね。買うものは、ここに書いといたから頼んだよ。あと、国外れに生る豊穣の実もとってきておくれ。アリウムさんの好物だからね。」
「あ、そうそう。最近国外れでアヤカシが人を襲うなんて噂を耳にするから気を付けな。まぁ、猪かなにかだろうけどね。」
「それと、今日は御標が下る日だからね。買い出しに行く前に、しっかりとアリウム神父に挨拶するんだよ。」 

▼描写2
 “聖教”。総本山を聖都に置く、左の地で最大規模の宗教。
左の地にはその影響力と国土から、四大国と呼ばれる四つの国がある。聖都は、そのうちの一つであることからも、その影響力の大きさが見て取れる。
 聖教は神が授ける御標についての理解を与え、この厳しい世界で生きる英知を与えたことから大きく尊崇された。他の土地神信仰などの宗教も認める寛容さから、影響力を拡大し、今では殆どの国で生活のあらゆる部分にまで浸透している。多くの国に聖教会所属の教会があり、アリウムがいるこの国の教会もそのうちの一つだ。

 左の地の季節は3ヵ月毎に唐突に変わる。この国では季節が変わった直後の、最初の一日(“始まりの日”)に豊穣を約束する御標が下る。
 御標がくだる日はどこもかしこもお祭り騒ぎだ。おかげで宿屋兼酒場の従業員である君はこうして働かされている……。
アリウム神父は教会の前で掃除をしていた。

□セリフ:アリウム
「おや、PC①さん、お使いですか?日々働いて感心ですね。あなたに神のご加護があらんことを。」
「サラさんの声がこちらまで届いて来てましたよ。相変わらず仲が良いですね。今日はどちらまで?」
「豊穣の実も取って来てくれるのですか。なんだか申し訳ないですが、PC①さんとサラさんの優しさに甘えさせて頂きます。」
「あの豊穣の実は絶品ですからね!ご馳走が待っているなら、どんな困難も耐えられるというもの。今晩はサラさんのお店にお邪魔しようと思うので、よろしくお伝えください。」


◆結末
 買い出しへ向かうとシーンを終了する。

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■シーン2 奇妙な出逢い シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC①の相棒になる“ラール”と出会うシーン。
ラールはPC①に対して興味深々で仲良くしたがるようにすると良い。たとえツンケンした態度のRPをしても尻尾などで好意的であることを表現すると良いだろう。あまりに会話が長くなりそうな時は腹の虫を鳴かせて半ば強制的に宿へ向かうと良い。
 サラやシルムを気にして其達を連れていくことに抵抗がある場合は、幻術が使えることを伝えると良い。
 豊穣の実を入手していない場合はラールが教えるか、持っていることにすると良い。
PC③がいる場合、ラールは登場しない為、ラールの台詞は全て飛ばすこと。また、知覚判定時にPC③は強制登場となる。実質PC③のオープニングだ。
幸福の壁は剝離チェック時のエネミーが使用した逸脱能力の数に加えること。これは神父がもともと、このアヤカシに対してかけていた逸脱能力である。PC達が判定に成功することにより、幸福の壁をシナリオ上で使用していたことになり、剝離チェックの値が減少するこのシナリオ上の仕組みになっている。

▼描写1
 お使いを頼まれてから数時間が経った。知り合いの畑やお店を渡り歩き、リストの物は一通り揃った。残すは、国外れの森に生る豊穣の実を残すのみ。緑は濃さを増し、まだ14時ごろだと言うのに、段々と薄暗く気味が悪くなってきた。

◇知覚判定:達成値7
・成功=黒いアヤカシが突如、襲い掛かって来た。鋭い鉤爪は今にも君の胴体を引き裂こうとしている。しかし、間一髪のところを紅が印象的な一匹のアヤカシがその鉤爪を受け止めた。
・失敗=黒いアヤカシが突如、襲い掛かって来た。鋭い鉤爪は今にも君の胴体を引き裂こうとしている。しかし、間一髪のところを紅が印象的な一匹のアヤカシがその鉤爪を受け止めた。君は驚き尻餅をつく。HP-1

▼描写2
 君は御標のことを思い出す。
『紅きアヤカシと共に歩め。さすれば争いは止められる。めでたしめでたし。』
目の前のこいつが御標のアヤカシだろうか……。いずれにせよ御標はそれに従い、努力することにより幸福な結末が“約束”されている。紡ぎ手であれば逆らっても別段問題はないが、理由もなしに逆らうこともないだろう。それに、君を襲ってきた黒いアヤカシはまだまだやる気の様だ。

□セリフ:ラール
「チッ!どうしてこんな時に人間が来やがるんだ。おい人間。ぼさっとしてないで、死にたくなければさっさと逃げな。」
「お前も戦おうってのか‥‥‥?ったく。お前みたいな変わり者は、前に一緒に戦った“変な旅人”以来だぜ。」

◇命中or術操判定+8:達成値20
※PC③がいる場合は「+8」は適用されない。PC①、PC③がそれぞれ判定を行い達成値を合算すること。
・成功=アヤカシは勝ち目がないと悟ったのか、すぐにその場から逃げ出した(逸脱能力:幸福の壁が使われていることがわかる)。
・失敗=アヤカシは君たちの攻撃にあっけなくやられ、動かなくなってしまう。

□セリフ:ラール
「なかなかやるじゃねぇか人間。ま、お前の助けがなくてもなんとかなったが、一応礼は言っておく。ありがと……な。」
「俺はラール。馴れ合いは好きじゃねぇし、人間は嫌いだ。勝手に怖がったり、恐れたり……襲ったりしやがる。ただ、お前には借りが出来た。人間。お前の名前を教えろ。」
「PC①悪くない名前だな。PC①お前はなんで逃げずに戦ったんだ?」
「御標か。そういうことなら、借りを返すまでは、仲良くしてやらんこともないっ!」
「今はこんなでも、本来の俺はもっと強いんだ。ただ、最近は他のアヤカシとの闘いが続いて、休む暇なくこんな姿に……。」
「俺は本来、土地神と呼ばれる程に強くて立派なんだ!ほんとなんだぞ!」
「他のアヤカシが人を襲う度に、俺が食い止めているんだ。それが、あの旅人との約束だからな。」

◆結末
 国全体に御標が下る。
『満月の夜の丑三つ時。光強き場所に集まれ。アヤカシを罰し、豊穣は約束される。めでたしめでたし。』
 シーンを終了する。

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■シーン2.5 “名もなき旅人”を探して シーンプレイヤー:PC②
◆解説
※PC②のOPシーン。PC②がいない場合はこのシーンは飛ばして構わないが、男性客たちがモノトーンミュージアムの世界観について説明してくれているので、描写1と男性客たちの会話をマスターシーンとして伝えてもいいだろう。
以下はマスターシーンの場合
描写:とある酒場で男二人が酒を酌み交わしながら、話をしている。
結末:アッハッハッハと二人の男は笑い続ける。彼らの出番はこれでおしまい。世界観を陽気な会話で語ってくれた男たちに拍手を……!

▼描写1
 君はかつて“名もなき旅人”に助けられた。
名前も知らない彼に一言お礼を言おうと情報を集めるも、なかなかうまいこといかない。
 君が途方に暮れている時、たまたま休息の為に寄った店で気になる話が聞こえてくる。

□セリフ:男性客たち
「おい、知ってるか?13年前の黒点の日に豊穣の国を救った旅人の紡ぎ手が、今度はその国を襲い始めたらしいぜ。」
「やっぱり紡ぎ手も所詮は神様に逆らった大罪人ってこったな。」
「御標に逆らっても異形化せずに自我を保ち、異形と同じ力を振るう紡ぎ手。英雄視されてた頃もあるって話だが、どの道、御標に逆らっていることに変わりねぇ。」
「ああ、つまりは異形となんら変わらねぇってこった。それに力を使えば使う程、虚無に蝕まれるんだろ?伽藍に堕ちるのも時間の問題だ。そいつもきっと伽藍に堕ちたんだろうな。」

▼描写2
 君は情報を頼りに豊穣の国へとやって来たが彼の姿はどこにもない。この国を襲っている紡ぎ手は本当に彼なのだろうか……。旅人の被害にあった国民に話を聞くも、記憶が大分あやふやで、確かな情報は一つも得られなかった。諦めまいと国を奔走していると、いつの間にか国外れの森へ来てしまう。

◆結末
 一匹の其達と人間の話し声が聴こえて来た。君はとある噂を思い出す。かつて、名もなき旅人は紅き妖と共にとある国を救った……と。左の地のとある地方では、其達のことをアヤカシと呼ぶらしい。もしかしたら、あの紅が印象的な其達だったら旅人の行方を知っているかもしれない……!
 シーンを終了する。

ミドルフェイズ

■シーン3 歪み始める物語 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
※PCが二人以上いる場合は、ここが合流シーンとなる。
 歪んだ御標が国全体に下るシーン。元より御標が下る当日はお祭り騒ぎの為、御標の対策をするのは後日からだ。その為、いつもとは違う御標に違和感を覚えつつも、国はお祭り騒ぎに明け暮れている。歪み表の結果はラールが引き受けても問題ない。出来ればこの歪みをきっかけにしてお互いが紡ぎ手だとわかるといいだろう。

※ラールとの信頼が築けた辺りか、シーンの終わりに下記を伝えること。

ラールはこれから、PCの一人として扱います。戦闘参加、逸脱能力使用、歪みを引き受け、情報収集、購入判定などなど。
それと、ラールが本来の力を出せていないというのは本当で、今後シーンを重ねる毎に、ラールの本来の力が解放されていきます(開放されるタイミングはシーンの開始時となります)。
・ラールの①“ケダモノLV3”が解放される。

 このシーン後半では、アリウムが善良な人物だと印象づけられると良いだろう。また、PCが望むのであれば購入判定を行っても良い。このシーンでは御標が下り、各々のNPCが喋る以外に何か起こることはない。PC達にぶっちゃけ、PC達が満足したら切りがいいところでシーンを終了するといいだろう。


▼描写1
 御標は国全体に響き渡った。
『満月の夜の丑三つ時。光強き場所に集まれ。アヤカシを罰し、豊穣は約束される。めでたしめでたし。』
しかし、今回の御標の内容はどこか奇妙だ。そもそも丑三つ時や、光強き場所などわからないことが多過ぎる。それに今までは必ずあった“捧げる”という部分が一切なかった。
→歪み表1.0 ROC

□セリフ:ラール
「おいPC①……。今御標が下ったろ。その内容はアヤカシを罰するとあった。お前はどうするんだ?」
「御標を疑ってもなんともないなんて、、もしかしてお前紡ぎ手か?」
「安心しろ。実は俺も紡ぎ手なんだ。13年前に“旅人”のやつと一緒に戦った時に俺も紡ぎ手になったんだ。」
「おい見ろ。“ほつれ”だ。ってことは、さっきの御標は歪められてたってことだ。最近“名もなき旅人”が人を襲ったって聞いたが、まさかあいつが伽藍になっちまったのか……。」
「ん?なんか落としたぞ。これは、食材の……名前?」

▼描写2
 日が暮れ始めた頃。君が宿へ戻るとサラの怒鳴り声が響き渡った。

□セリフ:サラ・ハザック
「いったいどこほっつき歩いてたんだい!!!!危うく準備が間に合わないところだったんだよ!!」
「言い訳なんざいいからさっさと手伝いな。なんだいそいつは?あんたでさえ迷惑だってのに変なの拾ってくるんじゃないよ。」
「……ったく。飼うんだったらちゃんと責任もちな。飯代はあんたの給料から引いとくからね。それと、あんたらの飯はシルムが作ってくれてるから、ありがたく頂くんだよ。

□セリフ:ラール
「俺がアヤカシだってことは黙っておいてくれよ。今は幻術でただの犬っころに見えてるが、人間がアヤカシを見たらなにしでかすかわからねぇからな。」
「おっかねぇ人間だ。ただ者じゃねぇオーラをヒシヒシと感じたぜ……。」

□セリフ:シルム・ハザック
「おかえりPC①。随分遅かったね。お母さんも私も心配してたんだよ。何かあった……?」
「全くそんな子拾って来て……。まぁ、可愛いからいっか!ほら、PC①もその子もお腹空いたでしょ?あなたの為に私が腕によりをかけて作ったんだから、ちゃんと全部食べてよね。」
「ほら、私の料理、“見た目は”お母さんも褒めてくれたんだよ。その、PC①のことを思って作ったから、きっと美味しくなってる……はず!」

◇肉体判定:達成値10
※登場しているPC(ラールを含む)はそれぞれ判定を行う。
・成功=予想に反してちゃんと美味しかった。今の所は特に身体の異変を感じない。HP1回復(HPが減少していない場合はシルムの作った干し肉“命石MM136を1つ取得する)。
・失敗=見た目はまともなのにどうしてこんな味になるのだろうか。これは最早芸術と呼ぶべき不味さだ。段々意識が遠のいていく……。HP-3


□セリフ:アリウム
「皆さん、こんばんは。PC①さん。サラさんのお使いとは言え、私の為にわざわざ豊穣の実を取って来て頂き、ありがとうございます。」
「おや、そちらの方は……?」
「新しい友人が増えたんですね。これもPC①さんの日頃の行いが良いからでしょう。」
「ご飯は親しい人と食べるとずっと美味しくなりますからね。」
「不明な点が多い御標に不安を覚えることもあるでしょうが、きっと何か考えがあってのこと。人は無力ながらも出来ることはある。お互いに神を信じ、祈りを捧げましょう。」
「明日になれば国をあげて解読に取り掛かることでしょう。大丈夫。神が示された道ですからね。きっと幸福が待っていますよ。」
「では、まだまだお会いしたばかりで話したいこともあるでしょうから、私は向こうのカウンターでサラさんとお話していますね。」

□セリフ:シルム・ハザック
「おかえりPC①。大分遅かったね。お母さんも私も心配してたんだよ。何かあった……?」
「全くそんな子拾って来て……。まぁ、可愛いからいっか!ほら、PC①もその子もお腹空いたでしょ?あなたの為に私が腕によりをかけて作ったんだから、ちゃんと全部食べてよね。」
「ほら、私の料理、“見た目は”お母さんも褒めてくれたんだよ。その、PC①のことを思って作ったから、きっと美味しくなってる……はず!」

◇肉体判定:達成値10
※登場しているPC(ラールを含む)はそれぞれ判定を行う。
・成功=予想に反してちゃんと美味しかった。今の所は特に身体の異変を感じない。HP1回復(HPが減少していない場合はシルムの作った干し肉“命石MM136を1つ取得する)。
・失敗=見た目はまともなのにどうしてこんな味になるのだろうか。これは最早芸術と呼ぶべき不味さだ。段々意識が遠のいていく……。HP-3

◆結末
 豊穣の国の夜は更けていく。宿からは夜遅くまで人々の笑い声が響いていた。
 切りがいいところでシーンを終了する。

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■シーン4 蝕みだす虚無 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 情報収集シーン。
※ラールもPC扱いとなる為、ラールも情報判定、購入判定を行える。
また、このシーン以降、クライマックスフェイズに入るまでは各シーンでメジャーアクションが余っているなら購入判定を行うことも可能。
・ラールの②“ケダモノLV4”が解放される。

▼描写1
 昨日のお祭り騒ぎから一転して、国には不穏な空気が漂っている。
今回の御標には不明点が多過ぎて国をあげて調査を行っている。満月の夜。丑三つ時。光強き場所。アヤカシを罰っする。
 それぞれが、日付、時刻、場所を指していることはわかるが、詳細は一切不明。ただ、アヤカシを罰するという点について、国民達は人ならざるモノと戦うことになるのだろうと、各々が戦の準備を進めている。御標を疑うことは、神を疑うことに直結する。人々はただ御標を信じ、御標に従い行動するしかないのだ。もし、神の御標を疑ったり、それに反する行動をとれば、神の意志に背いたとみなされ、身体が虚無に蝕まれ異形化してしまう。人により異形化する速さは違うが、やがては、この世の最も忌み嫌われる存在、伽藍となってしまう。

□セリフ:サラ・ハザック
「あ~やだやだ。どいつもこいつも暗い顔しちまって。辛気臭いったらないよ。こんなんじゃ飯がまずくなっちまう。」
「ほら、PC①。お前さんは今日も買い出しだよ。昨日は散々な働きぶりだったけど、まっ、その後頑張ってたしね。余った金は好きに使いな。」
→PC①財産点+2

□セリフ:シルム・ハザック
「PC①は今日もお使い……?なんだか皆暗い顔してるから、気を付けてね。」
「ねぇ……。これからこの国どうなっちゃうんだろうね。御標を疑う訳じゃないんだけど、アヤカシさんを罰するって、アヤカシさんを殺すってことだよね。」
「確かに最近は物騒な噂が多かったけど、それまではアヤカシさんと、なんか助け合っていた気がして……。」

▼描写3
 シルムがアヤカシについて口にすると、ピキッと何かがひび割れたような音が響く。
シルムの指先が異形化しているのだ。シルムのアヤカシを庇う思いが御標に逆らったと判断されたのだろうか……。異形化は緩やかにだが、確実に広がっていく。どうやらシルムだけでなく国のあちこちで国民が異形化しているようだ。

□セリフ:シルム・ハザック
「い、いや……。私、そんなつもりじゃ……!PC①、私、御標に逆らっちゃったみたい。」
「こんな異端者が傍にいたら気持ち悪いよね……。私も、アヤカシを罰すれば救われるのかな。」
「ありがとう。PC①。私お母さんの手伝いがあるから……またね。いってらっしゃい。」


□セリフ:ラール
「人間を助けることが、命を救ってくれた旅人と交わした約束だ。それに、PC①や、ここの奴らには世話になった。助けなきゃ俺のプライドが許さねぇ!」

★情報項目
・噂について 【社会】難易度:8、10、12
・御標について 【感応】難易度:12

◆結末
 情報を一通り判定し終えたらシーンを終了する。

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■シーン5 戦渦はすぐそこに シーンプレイヤー:PC①→3PLの場合はPC③
◆解説
・ラールの③“ケダモノLV5”が解放される。
 クライマックス戦闘直前のシーン。
このシーンで新たな情報判定を行うことが出来、情報を得たPC達はクライマックスへと向かうだろう。
 クライマックス直前のシーンだとPC達にぶっちゃけることをオススメする。そうすることで、PCもやり残しがなく次のシーンに進める。
 NPC、PCと話したいなどの要望があれば、シーンを増やすと良いだろう。
 月の満ち欠けは天文学が、丑三つ時は考古学が必要になる。光強き場所は国中をくまなく探し、天文学者と相談し見つけたのだ。アヤカシを討伐と言うのは、今まで被害を受けた状況から討伐することが罰を与えるのだろうと“アリウム”から伝えられた。


▼描写1
 翌日。国から御標の解読が出来たと報せがあった。満月の夜は本日。丑三つ時は深夜2時~2時30分の間。光強き場所は国外れの森の真ん中。アヤカシを罰しと言うのは、アヤカシを討伐すると言うこと。国の人々は夕方まで休息を取り、それ以降は戦の支度をするよう命令が下された。
※(3PLの場合はラールの描写は除き、《》内の描写になる)ラールは朝起きたらいなくなっていた。
《其達のPCにのみ御標が下る。
『丑三つ時に国外れの森の真ん中で人間を殺せ』
→歪み表1.0 ROC

▼描写2
 国からの命令が下されてから数時間経ち、日が暮れ始めた頃。国民は着々と戦の準備を進めていた。
(3PLの場合はラールの描写は除き、《》内の描写になる)唐突にラールが大急ぎでPC①の元へと駆け寄って来た。
他のアヤカシに話を聞くと、他のアヤカシもPC③同様に御標が下っているようだ。この状況に君は既視感を覚える。13年前の黒点の日だ。これが伽藍の仕業なら、希望を捨てるのはまだ早い。御標を歪めている元凶を倒すことが出来れば、国民の異形化は解け、本来の幸福が訪れるかもしれないからだ。


□セリフ:ラール
「PC①大変だ!俺たち、アヤカシ達にも『丑三つ時に国外れの森の真ん中で人間を殺せ』って御標が下った。」
「夢の中で御標が下ったんだ!他のアヤカシ達にも話を聞いたらここら辺に住むアヤカシ達全員に下っているみたいでよ。」
「このままじゃ人間とアヤカシの戦争になっちまう。こんなの普通の御標じゃない!」
「きっと御標を歪めてるやつを倒すことが出来れば、全員元通りになって、本来の幸福が待っているはずだ。」

★情報項目
・アリウムについて 【社会】難易度:12

◆結末
 太陽はその姿を完全に隠し、夜が来る。自身の手で物語を紡ぐ者たちを見守るように星々が瞬き始めた。
 情報収集を行い、PC達の準備が整っていれば、
シーンを切りクライマックスフェイズへと進もう。

クライマックスフェイズ

■シーン6 伽藍洞の心 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
・ラールの④“水晶の腕輪”が解放される。
 クライマック戦闘のシーン。
アリウムは信徒たちを戦の手伝いに行かせ、一人で祈りを捧げている。果たして祈りを捧げているのは神に対してなのか、それとも……。
 伽藍に堕ちた神父に最早“心はない”今まで善良な人物に思えたのは、今までの記憶からなる条件反射と、争いを起こす一心で演じていたに過ぎない。
 彼は“屈服の言葉”を使いアヤカシたる狼(MM239)たちを従えている。“屈服の言葉”は剥離チェックの際の逸脱能力に加算すること。

▼描写1
 アリウム神父は教会で祈りを捧げていた。

□セリフ:アリウム
「神よ。どうして娘は殺されなければならなかったのですか。神への純潔を破り、子を作った私を罰したのですか。それならば私を殺してくれればよかったのに……。」
「娘を殺したアヤカシ達を許すことが出来ません。他の人々を救い、娘を救わなかった異端者たる紡ぎ手が許せません。娘が亡くなったにも関わらず幸福に暮らす人々が許せません。」
「私は祈ります。アヤカシと人間に悲劇を。異端者たる紡ぎ手に烙印を。私と娘と同じ絶望を与えたまえ。」

「おや、PC①さん。どうされましたか?国から御触れがあったでしょう。アヤカシ達を罰する為に、貴方も早く……PC③さん、アヤカシである貴方がどうして隣にいるんです?」
「いけませんねぇ。神様の御標に逆らうなんて、それはもう異形と一緒ですよ。」
「しかし、貴方たちは異形化はしていないみたいですね。つまりは紡ぎ手……ま、異形と何ら変わりない化け物には違いないですがね。」
「ああ、さっきの祈りを聞かれてしまったんですね。なら、わかるでしょう。全員罰を受けるべきだと。」
「娘は殺されたんですよ。あの名もなき旅人に。」
「理由は関係ありません。あいつが、娘を殺したと言う事実だけが私の中にはあるのです。」
「それに、もう手遅れですよ……。神は娘だけではなく、私のことも見捨てたようだ……。」
アリウムが両手を高く上げると、曇白に染まった腕が露になる。

「だからね、私も神のこと見限ったんですよ……!!もう、争いは誰にも止められません!!」

『さぁ殺し合いなさい。愚かなアヤカシと人間よ。その血が漆黒に染まるまで争い続けるのです!!』
アリウムが天に放った言葉は御標となり、国全体に降り注ぐ。
→歪み表1.0 ROC



◯クライマックス戦闘
 アリウムと、狼MM239×2との戦闘になる。
PC達とラールを含めて一つのエンゲージを作り、そこから10mの位置に、アリウムと狼MM239×2を同一エンゲージとして配置する。
※戦闘の終了条件は、アリウムの㏋を0にすることである。

□セリフ:ラール
「アリウム!違うんだよ。お前の娘は伽藍になっちまったんだ。仕方なかったんだよ。」
「それにいくら許せないからって、何の罪もない人とアヤカシを争わせるなんて、間違ってる。」
「もう、何を言っても無駄か……。やるしかないみたいだな。PC①。」
「あれから充分に休ませてもらったから、今なら本来の力を発揮出来そうだ。やるぜ、相棒!」

※感応判定20
PC①と、ラールが感応判定を行う。その達成値を合算し、20以上だった場合、ラールの⑤“土地神”が解放される。


◆結末
 アリウムは倒れ、空を仰ぐ。そして虚ろな瞳で君達を見つめると、満足げに微笑んだ。
「これで、あの子と同じ終わりを迎え、神の身元へいかずにすむ。」
そして、ピキピキッパキッと何かが砕け散る音と共に、アリウムの身体は虚無に呑まれ、消えていった。

エンディングフェイズ


■シーン6.5 悲劇の結末 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 以下はエンディングプロットとなる。これまでの展開に応じて、自由にシーンを演出すると良いだろう。
 クライマックスで全員が戦闘不能になった際のバッドエンドようのシーン。
なるべく使われないことを祈るが、これも一つの物語としてここまで物語を紡いだ皆で悲しみを分かち合おう。悲劇も立派な物語であり、決して間違いではないのだから。

▼描写
 国外れの森で火が上がる。アヤカシと人間達の争いが始まったのだ。
歪んだ憎しみは国を滅ぼし、やがてその炎は左の地全土にまでいきわたるだろう。

◆結末
 これも一つの物語。悲劇に終わろうと、それを笑って楽しむ者も、この世にはいるのだから。

【個別エンディングプロット】
■PC③:住処も仲間も全て失った君は、PC①と共に旅に出る。
■PC②:“名もなき旅人”は現れなかった。この物語は悲劇に終わったが君の物語はまだ続く。さぁ、物語を続けよう。
■PC①:一度敗れた君だが、かつての憧れを諦められず、せめて手が届く範囲だけでも救おうと旅に出る。

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■シーン7 紡がれた幸福 シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 以下はエンディングプロットとなる。これまでの展開に応じて、自由にシーンを演出すると良いだろう。
 歪められた物語は正された。正しい物語、ハッピーエンドで幕を閉じる。物語を紡いだ君達に最大限の拍手喝采を。

▼描写
 アリウムを倒した後、ラールと共に急いで国外れの森の中心へと向かった。人間たちとアヤカシたちは睨み合っている。人間たちは初めて見るアヤカシ達に慄きつつも、御標の為に覚悟を決めて各々武器を構えている。
 アヤカシ達は、積極的に戦闘を行おうとするもの、気の弱そうなもの、そもそも戦えそうにないものと様々だが、御標に逆らう訳にもいかず、各々が人間に対して威嚇している。

 まさに、戦闘が始まろうとしたその時、人間とアヤカシ全員に御標が下る。
『人とアヤカシは手を取り合う。さすれば豊穣と平穏は約束されたし。めでたしめでたし。』

 シルムを含めた人々の異形化は奇跡的に全て解けた。人とアヤカシはお互い微妙な空気が流れたが、やがて手を取り合い、そのまま人とアヤカシとの交流を祝して宴会が開かれる流れとなった。

◆結末
 宴会は夜通し続いた。人間とアヤカシは御標がなくとも手を取り合い、末永く幸福が続いていくことだろう。
 こうして歪められた物語は正され、幸福な結末が紡がれましたとさ。めでたしめでたし。

【個別エンディングプロット】
■PC③:君はこのまま平穏を約束された地で過ごすのもいいだろう。しかし、PC①と過ごした時間はとても心躍る物だった。彼が旅立つと言うのであれば君も一緒に……。
■PC②:“名もなき旅人”は現れなかった。しかし、彼を追っていった先で物語をハッピーエンドにすることが出来た。きっと彼を追うことは間違っていない。
■PC①:豊穣の国の平穏は暫く約束されただろう。しかし、左の地には歪められた物語に苦しんでいる人はいくらでもいる。


◆ アフタープレイ ◆


 演目の目的を達成した項目については、以下のように判断すること。
・人とアヤカシの争いを止めた。3
・情報判定に一度も失敗しなかった。2


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情報項目

■噂について 【社会】難易度:8、10、12
■御標について 【感応】難易度:12

■アリウムについて 【社会】難易度:12
※PC③がいた場合、
ラールを情報収集のタイミングでNPCとして登場させるといいだろう。
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■噂について 【社会】難易度:8、10、12
□8
 アヤカシが人を襲う噂。以前よりアヤカシかと思われる被害はあったが、一部の作物を収穫前に食べられたりするだけで大した被害はなかった。そもそも人間に姿を見せることもなかったのだ。せいぜい偶然姿を目にして驚いた人間が勝手に転ぶぐらいのものだ。だが、最近になって凶暴なアヤカシが増え、畑全体を荒されたり、直接姿を見せ、明確な敵意を持って人間を襲うようにまでなった。アヤカシ達はとても凶暴で、“御標に従い人間を殺す”と呟いていたと言う。
※これまでは皆軽傷ですんでいる。というのも、アヤカシが人を襲おうとするたびに紅が特徴的なアヤカシが助けてくれた為だという。

□10
 “名もなき旅人”の噂。アヤカシが人を襲うようになった同時期に“名もなき旅人”に襲われたと言う人が現れた。しかし、詳しく話を聞いてみると、どこか記憶がおぼろげで、はっきりとその顔をみた者はいない。襲われた人は皆近くにアヤカシがいたと言っている。

・セリフ:ラール
「そんなのはでたらめだ!襲ったのは全部アヤカシなんだ。あいつら幻術を見せる“逢魔ヶ刻(MM113)”ってわざを使って、“旅人”の姿を見せてやがったんだ。」
「だけど少し妙でな……。逢魔が時を使ったアヤカシ本人もなんでそんなことをしたのか、記憶が曖昧なんだとさ……。」
※3PLの場合、ラールの台詞の代わりに下記情報となる。
→PC③はアヤカシたちから話を聞ける。どうやら襲っていたのは名もなき旅人ではなく、アヤカシたちが“”逢魔が時
(MM113)を使い、名もなき旅人が襲っているように見せていたらしい。しかし、そう仕向けたアヤカシ本人もなんでそんなことをしたのか、記憶が曖昧だという。



□12
 アリウムの娘の噂。アリウムには一人の隠し子がいた。その娘は“黒点の日”にアヤカシの手により命を落としている。この噂を知る者は教会でもごく一部の信徒だけだ。
 13年前、アリウムは娘がアヤカシに殺されたとだけ報せを受けた。豊穣の国の教会を任されるだけあって、人前では顔に出さなかったが、それ以来、皆が寝静まった後にも教会で祈りを捧げ続け、時折嗚咽を漏らしていたと言う。

・セリフ:ラール
「アリウムの娘か……。あまり思い出したくないな。」
「13年前の“黒点の日”にその娘は国外れの森に逃げ、そこで伽藍に堕ちちまった。」
「そいつに俺が襲われたところを、あの“旅人”が助けてくれたんだ。その時に俺も紡ぎ手に覚醒して、なんとか一緒に、娘を虚無に返すことが出来たんだ。」
※3PLの場合、ラールの台詞の代わりに下記情報となる。
→PC③は思い出す。13年前に名もなき旅人と共に倒した伽藍が、アリウムの娘だったことを。彼女は国外れの森へ逃げ、そこで伽藍へ堕ちてしまった。伽藍となった彼女は、アヤカシを、人々を襲おうとしていた。伽藍となってしまっては、最早“救う手立てはない
PC③は名もなき旅人と協力し、彼女を虚無に還すことが出来た。
心優しい彼女は、大好きだった国民とアヤカシを殺める前に虚無へと還ったのだ。

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■御標について 【感応】難易度:12
 アヤカシ達から話を聞ける。アヤカシ達にも御標が下っていたのだ。
豊穣の国と同じく、季節が変わった後の“始まりの日”に、人間を守るよう御標が下る。そして、その御標に指定された場所に向かうと必ず沢山の食糧があった。
 アヤカシたちはその大量の食糧を分け合い平穏に過ごしていた。つまり人間とアヤカシは共存関係にあったのだ。捧げ物を捧げ、その見返りとして災厄や盗賊などから、周囲のアヤカシたちが守っていた。
しかし、最近はアヤカシたち全員ではなく、各々に時期もバラバラで、御標が下っている。
『人間は住処を奪おうとしている。己が身を守るため、人間を殺せ。めでたしめでたし。』と言う内容だという。
 人間を襲ったアヤカシは普段は大人しく人間とも友好的な関係を望んでいた。しかし、今は記憶が錯綜しており、まるで誰かに操られているかのように人間を殺すと呟き続けている。

----------------------------------------------

■アリウムについて 【社会】難易度:12
 信徒から話を聞ける。昨夜遅くにアリウムが祈りを捧げていたところをたまたま目撃したが、その様子が明らかにおかしかった。とても楽しそうに笑っていたのだ。すぐにその場を去ろうとしたが、月明かりに照らされた神父の腕を見てしまった。
 その腕からは、色彩が失われ、曇白となっていた。信徒は何かの見間違えだろうと思い込み、誰にも打ち明けられなかったと言う。アリウムは一人、アヤカシ討伐の無事を祈り、教会に居るらしい。


各種データ

◆ 各種データ ◆

■ラール
其達LV3
肉:12/4 知:15/5 感:16/5
意:12/4 社:9/3 縫:9/3
 
命:7(8) 回:6 術:6 抵:6(7)
行:13 HP:18 MP:14 剥:0 サイズ:1

攻:1d6+5+4(斬)
対:単体 射:至近  判:命中
防:斬1/刺0/殴1/術0/縫0

出自:ひとりぼっち(MM58)
境遇:憧憬(MM59)
PT
チギレ(MM220)/名もなき旅人/PC①
◆装備
黒曜石の指輪(MM135)
〖水晶の腕輪(MM135)〗

◆逸脱能力
 《偽りの不死動》 (MM126)
 《虚構現出》    (MM125)
【3つ目】
 《憤怒の一撃》 (MM125)※状況次第で他の逸脱でも可。

◆特技
【常時】
・〖《ケダモノ》(MM113) LV1~5〗

【オート】
・《奇妙な関わり》(MM112)LV1
・〖《土地神》(MM115)LV1〗

【メジャー】
・《逢魔ヶ刻》(MM113)LV1
※この特技は戦闘では使用しない。

■解説
 ラールはPC①と出会った時にはかなり弱っている為、本来の姿ではない。シーンの開始時に①~④の順番で本来の力を取り戻していく。⑤の力を取り戻すには判定が必要になる。
①ケダモノLV3
②ケダモノLV4
③ケダモノLV5
④水晶の腕輪
⑤土地神

■戦闘プラン
“奇妙な関わり”と“土地神”を使い判定の達成値を操作しPC①のサポートをしよう。
自分のメインプロセスにはマイナーで戦闘移動し、エネミーと接敵し、通常攻撃をしよう。
※ラールは紡ぎ手であるPC達と同じ扱いをする為、逸脱能力もエネミーとは違い、個数管理ではない。
 その為逸脱能力を使えば剥離値も上がるし、剥離チェックも通常通り行う。もちろん失敗すればロスト扱いとなり伽藍に堕ちてしまう為、逸脱能力の使用には注意しよう。

-------------------------------------

■アリウム
※PCが2人以上の時はHP+20に加え、『』内の特技も使用すること。

肉:6/2 知:12/4 感:12/4
意:15/5 社:12/4 縫:15/5
 
命:4 回:5 術:11 抵:8
行:9 HP:80 剥:15 サイズ:1

攻:3d6+5(術)『8d6+5』
対:単体 射:15m 判:術操値
防:斬1/刺0/殴1/術0/縫0

◆逸脱能力
 □□《瞬速行動》(MM126)
 □  《憤怒の一撃》(MM125)
 □□《虚構現出》(MM125)
 □  《幸福の壁》(MM127)
 □□《堕落の声》(MM126)
※“屈服の言葉MM127”と“幸福の壁MM127“をもう一つ所持しているが、戦闘では使用しない。

◆特技
【常時】
・《無限の魔》(MM238) LV1
『《無慈悲なる一撃》(MM237) LV5

【オート】
・《虚ろなる魂》(MM230)LV1

【マイナー】
《範囲攻撃》(MM238)LV2

【メジャー】
・《神の拳》(MM85)LV3+《神の唸り》(MM85)LV1
・《神命裁判》(MM87)LV3

■戦闘プラン
メジャーアクションでは、“神の拳”を使い、ダメージロールで“神の唸り”を使い、単体に3d6+5(術)のダメージを与えよう。
 瞬速行動を使う時は、既に攻撃が成功しているなら“神命裁判”LV3で単体にバッドステータスを与えてもいいだろう。
重圧以外でバッドステータスを受けた時は“虚ろなる魂”で回復しよう。